PEAKを読んでみた

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この本は研究者の著者がチェス、バイオリン、数字の暗記等の様々な分野におけるトッププレーヤを研究し、超一流を作り上げた練習方法の知見をまとめたものである。特に、deliberate practicemental representationという2つの概念が印象に残ったので、それらについてまとめておく。

deliberate practice

筆者は二種類の練習方法、naive practicedeliberate practiceについて説明し、自分の技術を向上させるためにはdeliberate practiceが不可欠であると主張している。naive practiceとは意図がなく、ただ回数をこなすだけの練習を意味し、いくらこの練習を行っても上達が見込めない。例えば、ピアノの練習でいうと、長時間同じ曲を引き続けたり、テニスでいうとただ単に素振りをするということである。ある研究報告では、20 ~ 30年間のキャリアを積んだ医者は、医大を卒業して2 ~ 3年のキャリアの医者よりも、特定の観点でみると腕が悪いと場合があると報告されている。これは、naive practiceでは、能力を維持することすら難しいということを意味している。

その一方で、deliberate practiceとは明確なゴールに向けて、集中的に訓練する練習を意味する。結局、この練習方法を継続的に行えるか否かが、一流と二流の分水嶺となっているようだ。実際に、この練習を取り入れることで、数字の暗記競技において最高記録を更新したり、ゴルフのスコアが良くなったりといくつもの成功事例が報告されている。

deliberate practiceとは以下を満たすような練習である。

  1. 明確な目標が設定されている
  2. どこが良くて、どこが悪いのかのfeedbackが得られる
  3. 挑戦的である(comfort zoneから外れている)

1. 明確な目標が設定されている

例えば、ピアノの曲をあるスピードで、ミスを3回以内におさえて弾くというように、その練習が成功したかどうかを判定できるように設定する必要がある。

2. どこが良くて、どこが悪いのかのfeedbackが得られる

errorがあることが分かっても、どこがどう悪いのか分からないと改善することができない。この観点において、上級者からfeed backを得ることはとても有益である。

3. 挑戦的である(comfort zoneから外れている)

この観点が最も重要で、自分自信ができないことに挑戦する必要がある。自分自信ができる事をやり続けても決して成長しない。

 mental representations

mental representationsを鍛えることが、deliberate practiceの質を高めるために重要であると主張している。mental representationsとは物体、抽象的な物体(例えばアイデア)に対する精神構造を意味する。例えば、モナリザという言葉を聞いた時、頭の中に一枚の女性の像が浮かぶと思うが、その像がモナリザに対するmental representationである。ある人は、ぼんやりした像しか想像できないが、他方、鮮明ではっきりとした像が浮かぶ人もいるだろう。このmental representationの質が、プロとアマチュアでは異なる。例えば音楽のプロは、良い音に対するはっきりとした感覚をもっているため、自分自信の練習においても優れたfeedbackを得ることが出来る。一方、初心者のmental representationは貧弱であるため、間違った音を弾いても、気付くことができない。mental representationは、deliberate practiceを行うことで、その質を高めることができる。逆にmental representationを高めることで、deliberate practiceの効率も上がっていく。

感想

この本は僕にとってかなりのヒット作で、読んだのは1年半ほど前なのだが、一人で読みながら「なるほど!」と何度もつぶやく位おもしろいと感じたことを覚えている。僕はかつて、どこかで聞いた1万時間の法則を盲信していて、がむしゃらに練習時間を増やしていたことがあったが、後から振り返ってみると、あまり意味がなかった場合が多いと感じていたし、やはり質が大事だということをこの本で知れたことが有り難い。効率の良い学習に興味を持っている全ての人におすすめできる一冊です。